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相続登記の義務化について

私の父親は、5年前に亡くなりましたが、特に支障はないので、実家の名義は父親のまま母親が住んで、固定資産税も母親が支払っています。
一方、今年から、相続登記が義務化されるという話を聞きました。父親の相続人は、母親と私の他に兄もいますが、兄とは疎遠になっておりどこに住んでいるのかも分かりません。登記の義務化がなされたらどうしたらいいのでしょうか。

令和3年に民法や不動産登記法が改正され、令和6年4月1日から、相続登記が義務化されることになりました。

相続登記とは、不動産の所有者が死亡した場合に、その不動産の登記名義を相続人の名義に変更することをいい、遺産分割協議を行って相続人のうちの一人の名義にしたり、複数の相続人の共有名義にすることが行われます。

これまでは、遺産の中に不動産があったとしても、設例のように、相続登記をせずに、亡くなった方の名義のままで利用していたり、山中の土地などでは、登記に費用や手間がかかることもあり相続登記をせずに放置していることが多々ありました。しかし、昨今の空き家空き地問題で、所有者の分からない所有者不明不動産が多数存在し、近隣迷惑や都市開発の妨げになる事態が深刻化していることから、その対策としてこのような法改正がなされました。

この相続登記の義務化により、不動産を相続したことを知ったときから3年以内に相続登記を行うことが義務づけられ、正当な理由がないのにこの期間内に相続登記をしなかった場合、10万円以下の科料の制裁を科すことができるようになりました。また、この義務化は、これから発生する相続だけではなく、既に相続で不動産を取得している場合にも適用されますので、相続登記がなされていない不動産の相続人は、法律の施行後3年以内に登記をする必要があります。

設例では、5年前に父親が死亡して、既に相続が発生していますので、不動産を取得した相続人は令和9年3月31日までに相続登記をしなければいけないことになりますが、相続人のひとりである兄が所在不明で遺産分割協議が困難です。このような場合はどうしたらいいのでしょうか。

期限までに相続登記ができない場合、各相続人が、個別に戸籍などを提出して、自分が相続人であることを申告する、相続人申告登記という簡便な制度が創設されており、この手続きを行うと、相続登記の義務を免れることができます。従って、設例の相談者や相談者の母親は、この相続人申告登記を行って一応の義務を免れる、ということもできますが、この制度は、その不動産について、相続が発生して、その相続人が申告者であることを示すだけの簡易な登記制度になりますので、権利関係は明らかにならず、結局はその不動産の相続問題を先送りにして、二度手間になってしまうだけのことになりかねません。

相続人が所在不明の場合でも、住民票の異動を追うことで住所を探し出すことができますし、それでも分からない場合は不在者財産管理人を選任するなどして、遺産分割を行うこともできます。遺産分割未了の不動産をお持ちの場合は、問題を先送りにせず、弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士  川西絵理

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